外壁塗装の中で一番難しいのが木部塗装です。伸縮を繰り返す木に最適な塗料は現在ありません
外壁の木部塗装(塗り替え)
板張りの外壁や破風板、鼻隠しなどは『木』を使った部位です。無機の建材と異なり、木は生き物であり呼吸をして伸縮を繰り返します。この繰り返しに耐える塗料は現在のところ有りません。塗装をしなければ紫外線や風雨にさらされて木の樹脂分が蒸発し腐敗の原因になってしまいます。屋外の木部塗装ほど難しいものはありません。
木が腐る前に塗装を繰り返し、建築部材の補修・補強、取替えなどが必要にならないようにしましょう。
木部に最適な塗料とその種類
木部塗装は塗料や施工方法により、以下の種類があります。
①木目を活かす仕様 | クリヤー・ニス仕上げ: |
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②木を虫や腐敗から守る仕様 既存の木目を活かしたデッキウッドやベランダに最適な塗料です。 |
防虫防腐仕上げ:油性ですが、非常に防虫、防腐に優れた効果があります。日本エンバイロケミカルズ(旧・武田薬品工業株式会社)の『キシラデコール』という塗料が有名です。木目を生かした塗替えができます。詳しくはこちら ヨットのチークデッキ:南洋育ちのチーク材は元々油脂分が多く含まれ、腐れ難く塩水や紫外線にも強く非常に耐候性に優れた木材でメンテナンスフリーのように思われますが、やはりメンテは必要です。チーク家具はチークオイル(亜麻仁油)を布に浸み込ませてからぶきするときれいになりますがデッキはそうはいきません。詳しくはチークデッキのメンテナンス-工事中 |
③木目を隠して綺麗に仕上る仕様 既存の木目を完全に隠してしまう外回りの部位(板張りの外壁や破風板、鼻隠し)に使用されます。 |
木部にも、外壁塗装のように油性塗料から超耐候性のフッ素樹脂塗料を使用することは勿論できます。ただし、如何に長持ちする塗料を使用しても木の伸縮で塗料との接着が持たず剥がれてしまいます。さらに、木の呼吸の問題もあり、そう簡単では有りません。現状では合成樹脂(SOP)かウレタン樹脂の塗料が使われます。
合成樹脂調合ペイント(SOP):いわゆる、一般に言われる『ペンキ』がこれにあたります。木部はもちろん鉄部やその他いろいろな部位を塗ることができます。現在は油性ペイントというとこの合成樹脂調合ペイントを指します。高級仕上げは合成樹脂マリンペイントがお勧めです。ウレタン樹脂:合成樹脂ペイントより耐候性に優れ、塗膜は硬く艶も出ます。ただし、木の伸縮追従に難があります。 |
④環境にやさしい塗料で仕上げる | 自然塗料:原料は植物性油を使用し、化学物質を使用していため、臭いが少ないため人体に無害です。ただし、耐候性にはあまり優れていないので短期間で定期的な塗替えが必要です。詳しくはこちら |
木部塗装の実例1
作業工程 | 作業内容 | |
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下地処理 |
ホコリや汚れなどは外壁と一緒に高圧洗浄で洗い流します。また、窓や格子など外壁塗装とは異なる塗装の部位箇所は、養生(ビニール、テープ)します。 また、釘の出ているところは補修し、旧塗膜が剥がれている箇所はディスクサンダーで剥がして、塗面を平滑に仕上げます。 | 釘の箇所はパテ付け 木部のケレン:ディスクサンダーで旧塗膜を剥がし、塗面を平滑に仕上げます。 |
①下塗り | 刷毛やローラーを使って塗装します。 状況に応じて、下塗り、中塗りに分けて塗装する場合があります。 この場合の下塗りは木部に塗料が浸透するように薄めて塗り、中塗りは膜厚を確保するために厚く塗ります。 | |
②上塗り仕上げ) | 刷毛を使って塗装していきます。 仕上がりの品質を確保するために丁寧に塗ります。 | 刷毛で2回塗りすると美しく仕上がります。 |
完了 | 養生(ビニールや、テープ)を丁寧にはずします。 |
木部塗装の実例2
作業工程 | 作業内容 | |
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下地処理 |
ホコリや汚れなど取除くため、灰汁洗いします。また、窓や格子など外壁塗装とは異なる塗装の部位箇所は、養生(ビニール、テープ)します。 また、旧塗膜が剥がれている箇所はディスクサンダーで剥がして、塗面を平滑に仕上げます。 | |
①下塗り | 刷毛を使ってていねいに木部の着色塗装をします。 | |
②中塗り |
下塗りが乾いたら、ウレタン・ニスを塗装していきます。(刷毛またはエアースプレイ塗装) 2~3回繰り返す | |
③上塗り | ②の工程で十分な塗膜厚が確保できたらていねいに仕上げ塗装をします。(刷毛またはエアースプレイ塗装) | |
④完成 | まるで新品のように仕上がりました。 このように、木部のしっかりした素材の場合、表面の旧塗膜や破損箇所はていねいに補修し、塗装すれば元の美しい木の状態を蘇らせることができます。 | 写真提供:(株)林塗装店/神奈川県 |
ヨットチークデッキのメンテ実例3
使用する材料 | ミヤキのアクロンAB |
ミヤキのレブライト |
オスモ・ノンスリップデッキオイル |
チーククリーナー&ライトナー |
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最初に、欧米で広く使用されているチークデッキメンテナンス用品”チーククリーナー&ライトナー”でデッキの再生を試みたが、思ったより汚れが落ちなかったり、木の色の再生が上手くいきませんでした。
今回は、木造文化で培われた日本の”あく洗い”と自然塗料で有名なドイツの材料を使うことにしました。
今回はチークオイルを使用しませんでした。チークオイルの主成分は亜麻仁油でチーク材から抽出したものではありません。室内のチーク家具には最適ですが自然環境の厳しいヨットのデッキに使用すると酸化で黒く変色します。
作業工程 | 作業内容 | 写真 | ||
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デッキの清掃 | 高圧洗浄機でデッキ表面の汚れを落とす。 洗浄機が無ければホースとデッキブラシで汚れを落とす。 |
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あく洗い | アクロンA液・B液を1:1に混ぜて、状況に合わせて原液~水道水で3倍に希釈して薬品用ハケに適量を含ませてから、施工面に均一に塗布してください。塗ってから3~5分後(泡が汚れを浮かせます。)に濡れた布で汚れやあくをきれいに拭き取ってください。拭き取り後、再度充分に水洗い又は水拭きしてください。 写真はサイドデッキのがあく洗い後の状態です。 |
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木の色の再生 | シミ・汚れの程度に応じて、レブライトを水道水で 2~10
倍に希釈して、薬品用ハケに適量を含ませてから、施工面に均一に塗布した後に水洗い又は水拭きをしてください。 レブライトは医薬用外毒物ですので取り扱いには特にご注意ください。 |
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デッキオイルで仕上げ | きれいになったチーク材の油脂分補給と表面を保護する目的で、チークオイルではなくノンスリップのデッキオイルを刷毛塗りし、表面の塗料を拭き取ります。 チークオイルで仕上げる場合はアセトンで薄めたものをお勧めします。チークオイルは紫外線で酸化が進みすぐに表面が黒くなります。 |
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完成 | まるで新品のように仕上がりました。 チーク材のデッキは表面の汚れを”あく洗い”できれいにし、木材の色の再生を施してデッキオイルを塗布後に引き取れば、建造時の美しいチークデッキの状態を蘇らせることができます。 |
ビフォアー アフター |