日本には漆塗(縄文前期約5500年前)と柿渋塗(平安末期)があり、これら日本古来の樹脂塗料は現在でも使われています。 西洋から入って来たペンキとの違いを強いてあげれば、前者は伝統文化の領域に入り、後者は今なお開発を続け、多種多様な用途に新しい商品を生み出していることです。
日本に於ける塗装業は明治以降の約150年の間に現在の形が作られてきました。 この間に塗装業の呼称も色々と変遷し、実に様々な言い方が用いられてきました。一概に論ずることはできませんが、ペンキ屋はオランダ語が起源といわれ最も古くから使われていた呼称で、その後、塗装屋⇒塗装店⇒塗装会社の順に数人の職人組織から法人格を持つ株式会社まであります。 屋号や社名にはXX塗装、XX塗装店、XX美装、XX建装、XX技建、XXペイントなどがあります。

赤色漆塗櫛(福井県鳥浜貝塚遺跡)縄文時代前期(6000-5000年前)の漆塗りの作品です。漆が如何に経年変化に強い樹脂であるかの証明です。 現在は、建築や家具分野で漆を使用するにはその塗装工程の多さからコスト的に合わずほとんど使われていません。 幸い日本には漆の代用品としてナッツでおなじみのカシュー(cashew)の実から抽出した漆系塗料があります。 色数も豊富で室内家具を漆調に仕上げたい場合に使用されています。(塗料専門店で購入できます。)

柿渋は現代で言う防虫防腐塗料のようなもので木材などに塗ってその素材の寿命を延ばす目的で使われてきました。 浮世絵に描かれている黒塀はこの柿渋に縄の灰を混ぜて溶いた昔の塗料を塗装したものです。 最近では新潟県村上市のように市を挙げて昔ながらの黒塀を市民の力で復活させようというプロジェクトを立ち上げるところも出てきました。
柿渋の歴史は古いようですが、漆と違って素材そのものが自然へ回帰してしまうのではっきりしません。
柿渋は臭いが最大の難点でしたが、新しい技術によって純粋の柿渋タンニンを取り出すことに成功し、臭いのしない染料・塗料用柿渋も販売されています。

ここで言う『ペンキ』は大航海時代に、主に帆船の木材保護や水密性の維持のために使用されたオランダ語(pek)を語源としたものを指します。 現在でも商品として売られているスパーワニス(Spar vanish)はSpar=”マスト周りの艤装品”に塗る天然樹液を原料としたワニスのことです。 また、帆船の開口部を荒天時に塞ぐキャンバスは布に塗料を塗りこんだ物です。 帆にペンキを塗る歴史はノルウェーのバイキングの時代にはすで行われていたのは確かなようです。(バイキング時代の帆船 右図参照) いずれにせよ、現在使われている塗料の誕生はノアの箱舟にそれらしきものを塗ったという記述からして船とは切っても切れない関係にありそうです。